当院では、肺炎球菌ワクチン(プレベナーとニューモバックスの2種類)、帯状疱疹ワクチンの接種が可能です。 それぞれのワクチンについて、副院長の竹内に訊いてみました。
1.肺炎球菌ワクチンについて教えてください。
肺炎は、悪性新生物、心疾患に次いで死因の第3位です。毎年約10万人が肺炎で亡くなっています。肺炎球菌は肺炎の20-40%を占めます。肺炎球菌ワクチンは、死亡率の高い侵襲性肺炎球菌感染症を74%減らす効果があります。
出典:Lancet. 2009;374:1543-56. 厚生労働省 人口動態統計月報年計(概数)の概況(2011年)
2.プレベナーとニューモバックス、それぞれの違いを教えてください。
人に肺炎を起こす肺炎球菌は90種類ほど存在します。 ニューモバックスはそのうち23種類に対して抵抗力をつけるワクチンです。政府が定期接種を推奨しており、65歳以上で条件を満たせば金銭的補助が受けられます。接種は5年おきや10年ごとなど定まった決まりはありませんが、2回は打っておくべきでしょう。
プレベナーは13種類の肺炎球菌に対して強い抵抗力をつけるワクチンです。65歳以上で1回接種すればよいとされています。また、プレベナーを接種した後にニューモバックスを打つことでブースター効果という抵抗力を長持ちさせる効果があるとされています。肺炎球菌ワクチンを接種されたことがない方は、プレベナー→ニューモバックスの順で接種されることをお勧めします。
出典:MMWR. 2014 Sep 19;63(37):822-5.
3.帯状疱疹ワクチンについて教えてください。
水疱瘡という病気をご存知でしょうか。子供が罹る病気で、全身に水膨れができ高い熱がでます。感染力が非常に強いため、ほとんどみなさん罹ります。水疱瘡は自然に治りますが、原因となったウイルスは身体に潜伏したままです。50歳を過ぎる頃、抵抗力が弱ると身体に潜んでいたウイルスが活発になり、身体の一部に水膨れを作り熱や痛みを伴う病気が、帯状疱疹です。帯状疱疹も自然に治りますが、水膨れや熱が治まった後も2割ほどの方々には痛みが残ります。帯状疱疹後痛です。この痛みは現代の医学でも取り去ることが難しく、痛みを抱えて過ごすことになる大変つらい病気です。帯状疱疹ワクチンは、水疱瘡に罹ったことがない方はもちろん、罹ったかどうかわからない方、罹ったことがある方、子供の頃に水疱瘡のワクチンを接種したことがある方、ない方、帯状疱疹に罹ったことがある方、ない方、すべてのひとに帯状疱疹および帯状疱疹後痛を予防する効果があります。ワクチンの効果は5年間程度ありますが、再接種の決まりはありません。50歳を過ぎれば、一度接種することをお勧めします。
出典:BIKEN. 帯状疱疹.jp. https://taijouhoushin.jp
4.ワクチンを勧める訳
肺炎球菌による肺炎も帯状疱疹も耳にされたことがある病気でしょう。診療現場でもよく出会う病気ですが、診断は簡単ではありません。熱や咳がでない肺炎もありますし、火傷やトビヒのように見える帯状疱疹もあります。診断が遅れると治療も遅くなり、病気は重症化して生命の危険が高くなります。肺炎球菌による肺炎も帯状疱疹も抗菌薬や抗ウイルス薬で治療しますが、たちどころに治るわけではありません。さらに、病原菌も生きることに必死ですから、薬の効かない菌が出現します。いわゆる耐性菌です。耐性菌は患者さん自身を苦しめるだけでなく、身体の弱った人やもともと抵抗力の低い子供達の健康も脅かします。耐性菌は現代の薬が効かないため、問題は後世に持ち越されます。現在の治療が、未来の人達の健康に繋がっているのです。ワクチンを利用することで、自身の健康だけでなく周囲の人々、さらには未来の子供達を守ることになるのです。
出典:国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター. かしこく治して、明日につなぐ~抗菌薬を上手に使ってAMR対策~. http://amr.ncgm.go.jp