[YOC通信 令和元年夏号連動記事]必ず徹底してほしい熱中症予防~対応策~

これから本格的な夏を迎える季節。
熱中症と応急処置について、当院の非常勤医師であり、日本救急医学会認定 救急科専門医の宮本に話を聞きました。

1.熱中症とは?
熱中症は「暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称」と定義されています。(1)
気温や室温が高い状態だと、汗をかいても蒸発せず体温調節がうまくできません。湿度が高い場合も同様に汗が蒸発しないので体温調節がうまく出来ません。

このように、熱中症は高温多湿の環境下で体温調節がうまくできず、その結果生じる全身の様々な症状のことを指します。日本は高温多湿環境なので特に熱中症の危険性が高いと言われています。
また、大量の熱を体から産生した場合(激しい運動をした場合など)も同様に熱中症に至ることがありますが、あまり在宅療養患者には当てはまりません。

ただし、熱中症は「他の原因疾患を除外したもの」と定義されております。(1)つまり、熱中症のように見えて実は他の疾患だったという可能性があるため、注意が必要なのです。
例えば、「暑いところで農作業をしてから体がだるい」と訴えた患者が実は心筋梗塞だったり、「暑いところで過ごしてから体温が高い」と訴えた患者が実は感染症だったりすることもあるのです。
また、脳梗塞などの疾患がきっかけで、暑い環境下で動けなくなり熱中症に至るケースもあるので、確かに熱中症はあるがその奥に隠れた疾患が併存している場合もあります。

2.どんな症状が出るのですか?
熱中症は軽症であれば、めまい・脱力・大量発汗・筋肉痛やこむら返り、中等症であれば頭痛・嘔吐・倦怠感・虚脱感などが見られます。
また重症であれば意識障害や様々な臓器障害が出現し、時に致命的となります。
昔は「熱射病」とか「熱疲労」という分類がされていましたが、これだと「まだ熱疲労の段階だから大丈夫」と様子を見ているうちに悪化してしまうケースが多く見られたので、軽症から重症まで全てまとめて「熱中症」というようになりました。
このように症状を過小評価しないことが重要です。
中等症以上のとき、もしくは軽症でも数時間経過をみても症状が改善しない場合はお気軽に当院までご相談ください。

3.受診までに自宅でできる応急処置を教えてください。
先程申し上げたとおり、「熱中症のように見えて実は熱中症ではない」ということも多く、応急処置にも注意が必要です。
高温環境下に長時間いた など「明らかに熱中症である」ということがわかった場合は以下のようにするとよいでしょう。

(1)常温の水を霧吹きでかけて、うちわであおいだり扇風機にかけたりする
水が蒸発する時に体温を下げてくれます(気化熱といいます)ので、汗の代わりに霧吹きで水を吹きかけてうちわであおぐことで蒸発させます。
吹きかける水が冷たすぎると、手足の血流が悪くなり、体温を下げる効率が悪くなるので常温の水で問題ありません。

(2)首やわき、そけい部に氷のうを当てる
首やわき、そけい部などの太い血管が走行しているところにアイスノンや氷のうを当てることで冷やします。顔や手足などの血流の少ない部位のみ冷やしても効果は乏しいとされています。また、アイスノンは直接当てずにタオルや布に包んで当てるようにしましょう。

(3)ゆっくり水分補給を開始させる
脱水に対して水分補給を行なうことで発汗を促し、体温を下げる効果があります。
また飲むのは通常の水ではなく、経口補水液(OS-1®など)を選択します。
ただし熱中症患者全てが脱水に陥っているわけではないので、まずは(1)や(2)の治療を優先してください。また心臓・腎臓に病気を抱えている患者様は水分量に注意を払う必要がありますのでそのような方が熱中症に陥ってしまった場合は当院まで相談していただくのがよいでしょう。

<出典>

(1)日本救急医学会.熱中症診療ガイドライン2015.2015.
http://www.jaam.jp/html/info/2015/pdf/info-20150413.pdf